一生のご縁

会社員の6割が今の会社に一生勤めたいと思っている。そんなアンケート調査がある。ところが新卒で就職した人の35%が3年以内に離職してしまうそうだ。一生の勤め先にしたいが、実際にはそううまくはいかない現実がある、ということか。

人が人生につける仕事はそう多くはなく、一つの人もいれば幾つかを転々とする人もいる。たとえ自分で起業するとしても、ずっと同じ看板で通せるとも限らない。人は時代の流れに翻弄されるしかない小さな存在。そんななかで、自分を磨く。川底をころころと転がっていく石ころだ。流され、転がることでまるくなる。まるくなること、そのものが生きる目的のひとつでもある。それでも一生勤めたい、と思う心がある。

一生勤めたいと思うほどの企業との縁。一生添い遂げたいと思う相方との出会い。一生ファンでいたいというアーティストとの出会い。人にとって、一生を捧げるほどのなにか、というのは様々あるけれど、どんなことがあってもその気持ちがブレない、変わらない、永遠のものであるというほど大きな、強いご縁というのは、そう多くはないと思う。稀にそういうご縁を得られた人生というのは、それだけで産まれてきたかいがあったといえる。一生を超えて、永遠の宝になる。

あえていえば一生大事にしたいほどのご縁であるかどうかは、いつまでも心にのこる大切な宝であるかどうかが重要なのであって、本当に一生続けばよいというものでもない。たった3年でも、心に温かいものが残ればとてもよいご縁だったと思う。要は、そこでどれほど魂が充電できたか。それに尽きる。桃太郎のきびだんごのようなものかな。大切に思われることで、人は強く、打たれ強くなる。そして目的にむかって立ち上がっていける。本当に良いご縁というのは、ふらふらと流されていた自分を理由もなく拾い上げ、育ててくれ、一生生きていけるだけの力を与えてくれる、そういうご縁だろう。