もうずいぶん昔ですが…。ゲーム音楽の仕事をしていた時のこと。とある歌手の方に歌ってもらう事になり、スタジオ入りした。ところが、曲がよくないと事務所の社長さんから、辛辣なクレームをつけられたんです。)。ど素人がなにもわからないで作ったんでしょ、といわんばかり。正直、とても傷ついたし、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。自分なんかが出てこれる世界ではないのだな…かなり落ち込んで、すぐにでも羽田にとってかえして、千歳空港についたら速攻で味噌ラーメン(チャーシュー大盛りで!)食べたいような気分になったものです。経歴もなにもなかった自分なんかが書いた曲ですから、やっぱりその…歌いにくいのは曲のせいだと言われても、そうなんだろうな、と受け入れるしかありませんでした。
音楽についていえば、あの頃は本当にまだまだコンプレックスでいっぱいだった。今でもそれはありますが、もうこの年になると今更どうにもならないので、開きなおってます。やっぱり東京芸大ぐらい出てバークレー音楽院も主席で卒業してないと日本の音楽業界では、先生と読んでもらえないのです。そんな世界でレコーディングさせてもらえただけでもラッキーだったというわけです。東京にいくと、もうどこにいってもすごい人がいっぱいいてコンプレックス感じまくりです。東京で知人にあうと、センスのいい服きて、かっこいい外車にのって、ちょっとランチにいこ、と誘われてついていくと、外人の友達が普通にいて。そういう世界…。北海道に帰ってくると、自分もふくめ、ここにはなんにもないなぁと思う。学歴も、地位も、きらびやかな雰囲気も。同じ日本じゃないみたい。
でもね、心のそこでは思っていたんです。「これ、いい曲だと思うんですけど…歌にくいのは旋律のせいじゃなくて、歌い手さんの技量なんじゃないですか…」って。今でもそう思ってますけど(笑)。いや、歌手の方ご本人は、とっても一生懸命歌ってくださったんです。すてきな人でしたし、いいご縁でした。
そんな経験もしてきたんですが…。別に、立派な音大も出てないし留学もしてないけど、今はそんな自分でいいと思っている。学歴はなんにもなくて(大学中退です)、誰かや、なにかに保証してもらえるような肩書きはひとつもないのですが、そんな自分でよかったなぁと。なぜって。自分がやったことは、そのまんま自分自身の成果だと信じられるからです。誰かが認めてくれたとか、保証してくれたとか、そういうものじゃない。結果がひとり歩きして、多くの人に認めてもらえたという事実はとても大きくて強いんです。でも、一方でうまくいかないと、とても孤独です。人生って、そんなふうにいろんなことがトレードオフなんだなぁ。
なぜか、昔から右へ習えしないように生きて来ました。これからもずっと貫いていってしまうだろう。その代わり、理解されない、共感してもらえないで孤立するリスクも大きい。けどそんなことにはもう慣れっこ。いわれのない批難や中傷を受けることもある。そんな時はどうするか。けして相手を逆恨みしちゃだめなんだよ…。それをやったら自分にムチ打つことになる。自分がいけないんだ。自分が蒔いた種なんだ、ということを理解して、乗り越える。そこががんばりどころ。
ひとりで自分の道を歩みはじめる人がいる。直接、手伝うことはできないけれど、皆、目指すところは同じ。同じゴールに着いた時に、盛大に打ち上げパーティをやろうじゃないか。先に行って待ってます!あきらめんなよ!歯を食いしばって我が道を行け〜!
*で、この時の楽曲ですが…その後、案外にもその歌手の方には曲を気に入ってもらえて、コンサートでも定番レパートリーとして歌ってもらえました。結果オーライってことで。