2012年最初の合宿

今回の合宿は例年と違うペースでの開催のタイミングになってしまいました。昨年は大きな変動の年でありましたからやむを得ません。暦の上でもなかなか日取りが合わず苦心しました。
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1月のニドムの森はとても静かでした。丁度、旧暦の大晦日と新年を森のなかでひっそりと迎えることになりました。偶然ではなかったのでしょう。この時期、森の静けさにとっぷりと浸ってみるのも、とてもいいものです。

こんな静かな場所に二泊もしていると、いったい自分がどこにいるのかわからなくなります。現実感がなくなっていくんですね。
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でも、よくよく考えてみれば自然のなかにいるほうが本来は現実の全てであって、そこで非現実感を感じるということは、いったいぜんたい私達は日常をどこでなにをしているのだろう? そんな気がしてしまいます。合宿から日常に戻ると、いつも思うのは「また戻ってきてしまった」という感覚。それは正直なところ、あまり嬉しい感じとは言い難いわけです。現実は誰にとっても大変ですから。

日常とは違う世界に行って、戻ってくる感覚。これは魂感覚をゆさぶる、とてもいい刺激になるんです。だって、この世とあの世は別次元で、そして地上はとても大変な世界だからです。どんな魂だって生まれ落ちた時は「大変だな、これから始まるんだな」と武者震いして産まれてきます。そして、天に召される時は「やっと元の世界にかえれるんだな」と完全な安らぎのなかに戻っていきます。

私達が産まれたばかりの赤ちゃんの可愛い安らかな寝顔をみて、なぜか安心するのは天上界の静寂や調和をふと思い出せるからなのかもしれません。

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今回の合宿では、魂の目覚めというテーマですごくたくさんのワークをこなしました。どれも難しいワークではありませんでした。でも、一生の間でそうそう体験することのない内容ばかり。とても濃い内容になりました。素晴らしいセミナーになったと思います。参加してくださった人たちにとっても、一生の良い思い出になることでしょう。「魂の目覚め」というテーマも、時を経るごとに実感していただけるだろうなと思っています。

心を読み解く

いったいいつ頃から、自分はこんなに人の心を読み解く事に興味を持つようになったのだろうか。ふとそんな記憶をたどってみた。

大学に籍をおいた3年間は人生の暗黒時代で未来への展望がなにもなかった。そんな折り、図書室で心理学の本をなにげなく手にとって読んでみたのだが、そのなかに夢をとおして抑圧された意識をひもといていくという事例が載っていて、非常に興味をひかれたことを今でも鮮明に覚えている。

他も多くの事例が本には載っていた。自分が興味をひかれたのは「いったいどうすれば夢に隠された憎しみを読み解けるのだろうか?」という点だった。結局のところ自分が知りたい核心については、どこにも書かれていなかった。その後、大学に見切りをつけ、ついでに実家も飛び出して札幌に一人移住した。拾ってもらった会社で必死に働きながら衝撃的な体験をする。もう誰も彼の事は覚えていないかもしれないが、数ヶ月の間一緒に働いたT君だ。本州出身の彼は、気持ちの優しい青年ですぐに打ち解けた。引越しを手伝ってくれたり、一緒にご飯を食べにいったり、締め切り前はよく一緒に徹夜もした。だがほどなく彼は統合失調症らしいことが判明し、通院して投薬を受けてがんばったがやむをえず退職していった。最初に内科を受診し、脳波検査を受け、安定剤を飲むようになり、やがて症状が悪化していく様子を、一番間近で向き合ったのは自分だった。思えばあの体験が人の心の闇に意識を向ける、大きなきっかけになったと思う。

一番、症状がひどい時のT君には別の名前があった。まったく普段とは別のY君という人格に入れ替わってしまう。その後は深い昏睡状態になる。目覚めるといつものT君に戻っているのだが、その時に彼はもう一人の自分のことをまったく覚えていなかった。もう一人の人格であるY君とは、彼の部屋で何度か話したし、ふらふらとさまよっている場面を見つけて追いかけて見失ったりした。いったん、行方がわからなくなると何日も部屋に帰らなかったが、数日すると消耗しきって暗い部屋のなかでうずくまってひたすら眠っていた。

隠れた人格のY君は、ひたすらなにかに怯え逃げまわっているようにみえた。親身になってささえたいと思った。もっと話して欲しいと思ったが、Y君はけして心を開いてはくれなかった。簡単な会話に数回、応じてくれただけ。とても虚しく、そして残念だった。

症状が悪化して勤め続けることは無理ということでT君は去っていった。

心が完全に分裂して、二人の人格が同居することがある。それぞれは自分の名前をもっていて、別々のことを考えたり、悩んだりしていた。ただ、現実を生きている友人だったT君とは違い、過去の体験のなにかに怯えてつづけているY君とは知り合いにもなれなかった。

人は表の顔を裏の顔を持っている。その後も、たくさんの本を読んだがY君がいったい誰だったのか、どうして彼らは分離してひとつの心を共有することになったのか答えを見つけることはできなかった。幼少期になにかあったのかもしれない。大きなトラウマを抱えていたのかもしれない。繊細でナイーブな気質を持っていた彼が、誰かを傷つけてしまった罪の意識を受け止めきれず抑圧した結果なのかもしれない。

もしもう一度会えたら、なにか解決する為の方法論の一つも教えてやりたいと当時の自分は心のどこかで願った。30年近い歳月を経た今の自分ならT君の力になれると思う。そしてY君とも対話ができると思う。それだけの能力を磨き、経験を積み、技術も得た。神様はその機会を与えてくれるだろうか。