怖れる生き方
「怖れを手放そう」という表現がある。怖れも煩悩の一部だ。簡単に手放せないところが人間らしさでもある。だから難しいのだ。難しいことをがんばろう、なんとかやってみよう、というのはおしつけがましくて、あまり大きな声で言われたくはないかもしれない。
人生において「怖れ」るが故に、失敗したり、掛け違えたり、誤解したりされたり、対立したりすることは、本当によくあることだ。ありすぎて困るぐらいたくさんある。もし、人間が「怖れ知らず」な存在だったなら、この世の中はどうなっていたんだろう。天下泰平だろうか…。いや、逆に味気なく無味乾燥な世の中になっていたかもしれない。穏やかであること、安らげる世界であることは誰にとっても普遍の願いに違いない。だが、私たちの内部には「怖れ」という忌まわしき敵が潜んでいる。
怖れといかに向き合い、超越し、その向こうにある「自分らしい生き方」にたどり着くか。そこに人生の知恵の全てが網羅されているといってもいいのではないか。怖れを通して私たちは日々、ほんとうに多くを学ばされている。
とどのつまり「怖れる」ことも、生まれてきた時点で宿命といえるのではないだろうか。であるなら、あるがまま内なる「怖れ」と対峙し、人生の最後の日に勝敗がいかにでるのか甘受しようではないか。